[WikiJA-l] 海獺氏の個人攻

みずすまし mizusumashi @ coda.ocn.ne.jp
2008年 9月 7日 (日) 11:09:28 UTC


ggx6500 @ yahoo.co.jp 様

ご意見は、一つの立場として理解できます。また、たいへん難しい問題のご指摘
かだと感じます。

どうも修辞的疑問文もあるようで、どの部分にどうコメントしたものか迷います
が、なるべく質問に答えられるようにコメントいたします(何か私に質問したい
ことがあって、私の取りこぼしがあるようなら、お手数ですが再度明確なご質問
をお願いいたします)。

ggx6500 @ yahoo.co.jp さんは書きました:
> ここの方針等には規定がなく、自身の開示が可・不可以前にこのような手段を講
> じてA301m089の場合だけ証明でき
> れば解除してやるというのは逸脱しているように思うが、どうなんでしょうか?

前述のとおり、一つの立場として理解できます。

しかし、第一に、今回は、CU権限のない私から見ても議論撹乱が強く疑われざる
をえないケースであり、かつ二人のCU権限をもつ利用者が投稿ブロックは正当だ
と意見を一致させているケースですから、投稿ブロックそのものはやむをえない
ということで、私の意見は変りません。

したがって、今回の投稿ブロックをふまえて導き出される問題は、(少なくとも
私の考えに従えば)「投稿ブロック」の公平性ではなく、そのようなケースで
あってもISPを通して同一人ではないと証明できた場合には投稿ブロックを解除
するという措置をとった場合には、その「解除」が公平性を失するのではない
か、ということになろうかと思います。

さて、第二に、ISPを通して同一人ではないと証明できた場合には投稿ブロック
を解除するという措置は、性別や国籍のように何か投稿ブロックの原因として正
当化できない恣意的な基準を設けているわけではなく、議論撹乱という正当な投
稿ブロックの原因そのものについての基準です。

したがって、「同一人ではない場合」という基準自体の公平性に疑いを入れる余
地はなく、それが「ISPを通して同一人ではないと証明できた場合」という、と
きによっては証明の困難さを引き起こす基準に投影されるということが公平性を
欠くことになるのではないか、ということが問題になろうかと思います。

そして、「ISPを通して同一人ではないと証明できた場合」というのは「同一人
ではない場合」の合理的かつ典型的な一例であり、その目的において公平性を疑
いを入れる余地はないでしょう。

しかし、サイドエフェクトについて考えると、ご指摘のようなさまざまな証明困
難なケースが考えられ、そのサイドエフェクトにおいて公平性を傷つけているの
では、といわれると、これは難しい問題だと思わざるをえません。

ここでは私ははっきりとした答えを持っているわけではありませんが、次のよう
に考えます。

つまり、第三に、日本語版ウィキペディア・コミュニティにとって操作しようの
ない事情によって、投稿ブロックの根拠が誤認であったと証明できる人と証明で
きない人が生じえるが、仮にそのことによって公平性が損なわれるとして、その
公平性の価値が、誤認であることを証明できた人の投稿ブロックを解除すべしと
いう要請に一般的に優るという道徳的判断は一般的ではないだろう、ということ
です。

そのような道徳的判断が一般的ではないだろうことの傍証として、社会において
最も公平なプロセスを志向して練り上げられている裁判所の訴訟においてさえ、
証拠の獲得と提出は原則として当事者の負担となっており、偶然的な事情によっ
て証拠の獲得と提出ができず、実体的真実とは異なる判断が下されることはあり
うることであり、部分的には改善の動きもありますが、基本的枠組みとしては維
持されており、近い将来変更されるという見通しもない、ということを挙げるこ
とができます。
(これは、証拠の獲得・提出能力によって人の扱いが変るという帰結をどうとら
えるかという、ある道徳的判断の一般性についての傍証であり、日本語版ウィキ
ペディアのシステムが全体として訴訟に似ているとか、似ているべきだとか主張
しているわけではないことは、強調しておきます。)

対して、第四に、議論撹乱が強く疑われざるをえないケースでISPを通して同一
人ではないと証明できた場合に、その投稿ブロックを解除することの、ウィキペ
ディア・プロジェクトの推進と発展への利益は、ほとんど明白なものだといえる
でしょう。ウィキペディアは、すこしでも多くの参加者による、いわば「多くの
目と手」による発展をその方針としているからです。

以上より、議論撹乱が強く疑われざるをえないケースでISPを通して同一人では
ないと証明できた場合に投稿ブロックを解除するということは、その目的におい
て公平性に疑いを入れる余地はないが、サイドエフェクトも考えると道徳的判断
が分かれうるところではある、しかしそのような措置のウィキペディア・プロ
ジェクトの推進と発展への利益はほとんど明白であるので、正当化できる、と私
は考えます。


> 今回とは別のケースでも今後このように公式な方針でないことがその都度通るな
> らば方針から外れた越権行為のよう
> なことが一人歩きするような格好となり、危険ではありませんか?

上述のように、私は正当化できると考えているので、「越権行為のようなこと」
だとは考えません。また、解除するべきではないというのは一つの立場として理
解できますが、「越権行為のようなこと」という評価は、(少なくとも私の立場
である)解除が正当化できるという逆の立場を無視するものであるので、賛同で
きません。


> 公正さを保つためにも既に解除された人々も含め、多重アカウントの不正使用の
> 疑いでブロックされた今までの全ケー
> スについても改めて実施しないのであればA301m089さんや一部の人にだけ適用す
> べきではないのでは?(疑われる多
> 重アカウントが同一ISPの事例の場合)

「ISPを通して同一人ではないと証明できた場合」という基準を一部の人にだけ
適用するべきではない、ということを、いままでの慣習をふまえておっしゃられ
ているのでしょうか?

もし、そうでしたら、その慣習は改められても良いだろうと思いますし、異議申
し立ての機会はいままでもMLで与えられていたので、変更しても公平性に欠くこ
とにはならないだろうと思います。


> それから、今回の場合はIPそのものが完全に合致してしまったのでブロックは止
> むを得ず、管理者の『誤認』ではない
> と思いますが、中には荒らしとか投票した人などと同じ分野の編集が複数あるだ
> とか、それらと同一レンジとかISP
> が違っていても同一地域だからといった理由を付けてIPそのものが合致しないの
> にブロック依頼を提出することもな
> く管理者の独断でブロックしたものの、結局は誤認であったという事例も少なか
> らず存在するようですので明らかな
> 荒らしを除き、ブロックするに当たりCUの方は慎重に慎重を期すべきだと思うの
> と、一定期間参加されて大きな問題
> を起こすことがなかった方をブロックする場合はCUを実施した方がブロック依頼
> を出し、結果が確定するまでの間は
> その方に議論に参加することを控えてもらってブロックするのは結果を待ってか
> らでも遅くはないと思うのですが、
> いかがでしょうか?

明確な議論撹乱とそうでないものをどう線引きするかという難しい問題があると
いうこと、CU権限者が基礎とした情報のすべてを一般利用者は得られないのでそ
れを審査するのはいまのところCU権限を持つ利用者の相互監視に頼らざるをえな
いということを踏まえながら、やはり慎重な手続きの要請は認められるところで
あり、この提案は考えてみるに値するものだと思います。

ご提案が、より具体的なものとなれば、もう少し詳しいコメントをさせていただ
けるかと思います。
(私自身は、全員がCU権限とOversight権限をもつ、全員が管理者以外で構成さ
れた、あるいはほとんどが管理者以外で構成された裁定委員会か、諮問機関のよ
うなものが効果的なのではないかと思っています。)


とはいえ、なにか慎重な手続きを利用したところで、投稿ブロックが必ずその手
続きの後でなくてはならないか、といえば疑問ではあります。

ログインと非ログインを使い分けた議論撹乱は、ウィキペディアの基盤でもある
匿名性を踏まえて上での善意への信頼と対話による解決を根本から破壊する行為
であり、それが許されないことはウィキペディアの方針を参照するまでもなく明
らかなことであると考えますので、「明らかな荒らし」と同等、速やかに阻止さ
れるべきであると考えます。

このあたりのバランスは、やはり具体的な案を詰めていくなかでしか、考えるの
は難しいだろうと思います。

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  Mizusumashi





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